でんしゃがはしる

『さんかく』

※この絵本は絶版で、現在入手困難です。以下の文章は付録に掲載された、山本忠敬自身の取材記です。

絵本の絵を読む
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山本忠敬

普通は、文字は読むもの、絵は見るものです。文字を読んで、論理的思考によって理解するのが、本を読む、ということの本質ですが、絵本の場合はもっと大切なことがあると思います。
それは絵本の絵を見るという読み方、絵を読むことです。それは論理的思考ではなくて、感性に訴える直感的思考によって理解することです。
たとえば、言葉を満足にしゃべることもできない幼児が、おとなには言葉になっていないと思われる言葉をしゃべりながら、絵本のページをめくってひとりあそびをしているのを見かけます。これこそ幼児が絵本の絵を読んでいるので、この時の幼児の感性は、直感的思考によって、絵本を理解しているのだと思います。また、私は丸善などに外国の絵本を求めに行きますが、ます最初に絵として良い絵だと思ったのを、たくさんの本の中からピックアップします。それから一冊ずつ、ていねいに一ページ、一ページ、めくりながら絵を読むのです。その時、ほほえみを感じたり、次のページをめくりたい衝動にかられた本を買っていきます。
もちろん、その時、文字は読みません。始めのうちは買ってきた絵本を、辞書をひきひき訳して読みましたが、ある時、絵を読んで見ていて楽しかった絵本が、言葉を訳したら、つまらない絵本になってしまったので、それ以来言葉を訳して読むことをやめました。今では、日本の絵本も文字はほとんど読ます、自分流に絵だけを読んで楽しんでいます。絵本の絵を読んでの言語は、直接すぐに言葉になって口からでてこない場合もありますが、それでも良いと思います。
この『さんかく』の絵本は、以上のような意味で、絵を読んでほしい絵本なのです。絵を読むためのめやすとして必要最小限の文をいれてありますが、できることならこの文章にこだわらず、自由に絵を読んで、楽しいお話を作って下さい、そうしやすいために、色と形の基本のものだけを使って絵本を構成したのです。ドラマ構成のバックボーンは仏教でいう、宇宙の輪廻です。

「少年版・こどものとも39号〈6〉さんかく 折り込みふろく”絵本の楽しみ”」より

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