でんしゃがはしる

『おおきいものは?』

※この絵本は絶版で、現在入手困難です。以下の文章は付録に掲載された、山本忠敬自身の取材記です。

大きいもの 小さいもの
おおきいものは.jpg

山本忠敬

幼児は大きいとか小さいとかということをその時々に即して個々には判断して知っています。そこで、大きいって一体どんなことなんだろう?というものの考え方のひとつの基本を単純に絵(図)式化したのがこの絵本です。
幼児が生活の中で身近に見て知っているものを適当に取り上げて(この取り上げ方についてはあとでふれます)”より大きいもの”へと順序良く次々と並べて、”大きいもの”の系列を作ります。この系列の頂点に(幼児が知っている範囲では)ビルとか山とかが出てくるでしょう。それより大きいものはあるだろうか? あるとすれば何だろうと考えた時、そこには未知の世界があり、無限に広がる未来の夢につながるわけです。
今度は逆に、”小さいものは?”と考えると、今までの大きいものの系列がそのまま小さいものの系列になって、今まで大きかったものが、すべて”より小さいもの”になってしまいます。例えば「にわとりより大きいぼく、ぼくより大きいおかあさん」が「おかあさんより小さいぼく、ぼくより小さいにわとり」といった具合に。そして、大きいときと同じに、小さいものの頂点の向こうに未知の世界があるわけです。
ところで、この絵本の”大きいものの系列”に取り上げたものの中で、自動車と家とは、大きいということは高いとか広いとかいうことをふくんで、更に”より小さいもの”をすべて包み込んでしまう立体空間であることを絵ときする必要上取り上げたのですが、その他は深い意味はなく絵本の進行上で適当にピックアップした”大きいもの”なので、これ以外にも幼児が生活の中で身近に見て知っているものがたくさんあるはずです。
そこで、”おねえさんはぼくとわたしより大きくて、おかあさんより小さい。”とか、”ぼくとわたしより小さくて、にわとりより大きいものは?犬のボチ”などと、大きいものと小さいものとを比較対照することで新しいものの位置づけをするという遊び方へと、この絵本『おおきいものは?』を抜け出してお子さんと遊んで下されば、と思います。

「少年版・こどものとも23号〈2〉おおきいものは? 折り込みふろく”絵本の楽しみ”」より

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